組合長の記録ブックに、こんな写真が残っていました。夏の子吉川に据えられた、板と網でできた仕掛けです。宮内地区の夏の風物詩、「ごり漁」のものです。


写真をよく見ると、仕掛けの作りが分かります。浅瀬に板をハの字に張って魚の通り道を狭め、その先にかご網を据える。海から群れを成して遡上してくるゴリを、この形で誘い込みます。石積みを築いて誘導する昔ながらのやり方が、いまも受け継がれています。
コムギとオオムギ
ゴリはハゼ科の淡水魚の総称です。宮内地区では大きさで呼び分けていて、体長2〜3センチほどのものを「コムギ」、4センチほどのものを「オオムギ」と呼び、珍重してきました。
漁期は7月28日から9月15日まで。川の水がぬるみ始める7月下旬ごろから遡上が始まり、8月上旬には浅瀬で群れを成して泳ぐ、涼しげな姿が見られます。
待つことが、漁のほとんど
ゴリは警戒心の強い魚です。ですから漁では、物音を立てず、人影を見せないのがこつになります。
- 水の流れや浅瀬のくぼみなど、ゴリが通る適地を見極める
- そこにかご網を沈める
- あとは遠目から、のんびり静かに待つ
追い込み漁が川面をたたいて魚を動かす漁だとすれば、ごり漁はその正反対です。何もしないことが仕事になる。水量が少なく、風が穏やかで、水温が高い盆前後がいちばん魚影が濃いといいます。逆に雨が続いて水が濁ると網も置けず、ひと夏で満足に漁ができたのは8月上旬の一度きり、という年もありました。
帯のような群れは、もう見られない
記録には、少し寂しい話も残っています。数年前までは数十メートルの幅で帯のような群れをつくり、一度に20キロほど水揚げされることもありました。それが近年は、一度に1キロ以上捕れることはまれになっています。
約50年にわたってゴリを捕り続けてきた80代の川漁師は、ヤツメなどほかの魚も捕れなくなってきたことにふれ、生態系が変わってきたのかもしれない、とつぶやいたと伝えられています。漁を続けてきた人ほど、川の変化に早く気づくのだと思います。
ゴリ鍋と、「ごり押し」
水揚げしたゴリは、いまは自家消費か、知人に配られるのがほとんどです。地元ではかき揚げや卵とじにされ、淡白ながらしっかりとした味わいの白身が特徴とされます。ゴリから出るだしを生かし、生じょうゆとナス、タマネギを合わせて煮たゴリ鍋も、この時季ならではの一品です。
ちなみに、物事を強引に押し通すことを言う「ごり押し」。語源辞典の類によれば、川底に敷いたむしろの上の小石にゴリを追い込み、むしろごと強引に捕らえるさまが語源になったという説があるそうです。ゴリの名が、思わぬところで日本語に残っています。
9月に入って水温が下がると、ごり漁を行う川漁師の姿は見られなくなります。入れ代わりに、秋を告げるヤツメ漁が始まる。子吉川は、そうやって季節を渡っていきます。
組合に残る記録を、これから少しずつ紹介していきます。当時の写真やお話をお持ちの方は、ぜひお知らせください。この記事にも追記していきます。
出典・参考
- 秋田魁新報「水とともに」(掲載日不明)子吉川・宮内地区のゴリ漁
- 組合の記録写真(2016年7月27日撮影)
- 組合長 保管の記録ブック
- ※ 新聞記事は事実部分を要約して構成しています。紙面および紙面の写真は掲載していません。
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